お金を残すために必要な哲学を身に付ける方法

ドルコスト平均法を例に、お金を残すためには哲学こそが必要である理由と、その獲得方法を考察していきます。

ようこそ初回レッスンへ!

いまや日銀の調査結果にさえ「スキャルピング」や「自動売買ツール」などが取り上げられる時代となりました。早く・手軽に・簡単に稼げる手法はトレンドになっていますね。

さてどのようなシステムや手法を取り入れるかは本人の判断。今回の記事では、お金を残すために哲学が必要な理由と身に付ける方法を、ドルコスト平均法を例に考えていきたいと思います。

単純だからこそ哲学が要求される「ドルコスト平均法」

ドルコスト平均法:一定の期間に同じ金額を投資し続ける方法。価格が高いときは少なく、価格が低いときは多くの資産を買うことになるため、長期的には資産の平均コストを下げることが期待できる。

ドルコスト平均法ほど続けるために哲学が要求される手法もないでしょう。なぜなら、市場が見向きもしなくなったときでも、「その銘柄」を定期で買い続けるアクションが必要だからです。

たとえばビットコイン。上昇するときは突き抜けるものの、2023年中盤には人工知能株に置いてけぼり。こうなると上昇が明白な「そちら」に積み立て先を変えたくなってしまいます。

AI株において行かれるビットコイン

ですが別の期間に目を移すと、人工知能株からビットコインに逃げ出したくなるような期間もあります。

ビットコインにおいて行かれるAI株

ドルコスト平均法の強みは、価格が低下している時に同じ金額を継続的に投資することでのみ発揮されます。

それが市場の短期的な動向に一喜一憂し、次から次へと「上昇しているもの」へ投資先を移す行為は、「高値つかみ平均法」へと自分を誘導することになります。

これこそが、ドルコスト平均法を続けるために最も必要なのは投資の哲学である、ということを如実に示す事例ではないでしょうか。

人間の本質は変わらない

歴史を振り返ってみれば、我々人類は無数の技術的飛躍を遂げてきました。しかし、これらの進歩にもかかわらず、人間の行動パターン自体は驚くほど変わっていません

欲望、恐怖、愛情、嫉妬といった基本的な感情は、依然として我々の行動を動かし続けています。

たとえば先ほど事例で上げたビットコインと人工知能。自分が保有していない方の資産が上昇したとき、私たちが抱く感情もやはり似ています。

  • 欲望:あっちを保有していたらガン上げだったのに!

  • 恐怖:自分の銘柄が塩漬け一直線だとどうしよう?

  • 愛情:ここまで保有したのだから最後まで持ち続けよう

  • 嫉妬:ちっ、あのアカウントめ調子よく稼ぎやがって

そして迷っている間に「あっち」は止まらず上昇。最後の最後にエイヤで乗り換え、気がついてみれば高値づかみ…

はい、筆者も何度か経験しましたから、自分事として語っています。

ドルコスト平均法もふくめ、新しい手法やシステムなどで視野を開くことができるかもしれません。ですが、その新たな視野を生かすためには、人間という存在が本質的に持っている特性と感情を理解し、受け入れることが不可欠なのです。

投資哲学資金管理、最後は度胸
投資に必要なのは、この3つだけです”

成功例から得るものはほとんどありません。私ががどの様な失敗をして、どの様に対処し、どの様に立て直したかを見てもらいたい。

吉中晋吾(よしなかしんご)--バーグインベスト株式会社代表取締役CEO

吉中トレーディングカレッジ

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哲学を身につけるには歴史を知ることが手っ取り早い

あなたがもし日本円を自由に印刷して使う特権を得たら、どうしますか?

普通に考えれば、これまで欲しくても我慢していた商品やサービスを思う存分買うでしょう(もちろん私でもそうします)。

何なら特権が消えた後の財産を保証するため、金などの価値が消えない資産も買えるだけ買いたいとは思いませんか

これこそが、通貨発行権を手にした世の政治家が抗えなくなる誘惑であり、人類が繰り返す行動の原理になっています。

法定通貨の歴史は通貨発行益の拡大戦争

私たちは日常的に法定通貨、たとえば日本円や米ドルなどを使用しています。これらはもともと金との交換を保証された通貨でした。しかし、ある時点からその裏付けは「国の信用」へと変わっていったのです。

その理由は、通貨発行権を持つ人々が通貨発行益を享受したいと考えたからです。自国内だけでなく、他国の人々や物、金(ゴールド)も自分たちが発行した通貨で手に入れたいと望むようになりました。

しかし、ただ偉い人の絵と数字が書かれた紙幣を海外から持ち込まれても、通常の国がそれを受け入れることはないでしょう。

だから、通貨発行益を得た人々や国は、軍事力によって他国を支配下に置くようになりました。そして自国の通貨の受け入れを強制し、対価として資源やサービスの提供を求めるようになったのです。

ところで以下は、主要国が金本位制を廃止し、通貨を自由に発行するようになった時期です。

アメリカ合衆国1933年に金兌換の一部停止、1971年に金とドルの直接的なリンクを完全に絶つ(ニクソン・ショック)。

イギリス1931年に金本位制を一時停止。1944年のブレトンウッズ体制の下で再度金本位制に戻るが、1971年のニクソン・ショック以降、完全に金本位制から離れる。

フランス:第一次世界大戦開始とともに1914年に金本位制を一時停止。1928年に復帰するも、1936年に再び離脱。1971年のニクソン・ショック以降、完全に金本位制から離れる。

ドイツ:第一次世界大戦開始の1914年に金本位制を停止。ヴァイマル共和政時代にハイパーインフレーションを経験し、その後の時代に金本位制を再導入しなかった。

日本:第一次世界大戦開始の1917年に金本位制を停止。1930年に復帰するも、1931年(昭和金融恐慌)に再び離脱。1971年のニクソン・ショック以降、完全に金本位制から離れる。

第一次世界大戦は1914年第二次世界大戦は1939年に始まりました。

欧州勢が第一次世界大戦で金本位制を停止したのは、通貨発行での戦費調達を行うことが理由であることは明らかです。

中立だった米国も、第2次世界大戦への参加を準備する中で資金調達の一環から、電撃的な金兌換の停止を行います。

ルーズベルト大統領は当時、米国の国民をだまし討ちするような形で、国民の持つ金を安値で買い上げました直後に彼は通貨価値を切り下げる法案を通過させ、結果的に米国政府は国民から買い上げた財産を戦争資金の一部として使用しています。

そしてルーズベルトが国民から収奪した資金によって設立されたのが、為替安定資金です。

Exchange Stabilization Fund(ESF)は、アメリカ合衆国財務省の一部で、外国の通貨を安定化するために使用される予備資金です。この基金は1934年のゴールド準備法によって創設され、当初はアメリカドルと金の交換レートを安定させるために使用されました。

2023年3月には、シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクが相次いで破綻しました。これを受けて打ち出された資金供給プログラムの一部資金源となったのが、ESFでした。

私たちの目の前で起きている銀行制度の救済その資金の一部は、金本位制を放棄した時にルーズベルト大統領が自国民から集めたゴールドの売却益に由来しています。

この事実は、私たちの生活の中に、その時代の歴史が今でも生き続けていることを鮮やかに示しています

筆者は残念ながら歴史の専門家ではありませんので、間違いも含まれているかもしれません。しかし、通貨の歴史を大まかに見てみると以下の事実が見えてきます。

  • 通貨発行権を手に入れた人と国はその魅力に抗えなくなる

  • 通貨発行益を拡大するため自国通貨の受け入れ国を拡大したくなる

  • 目的の達成のために、軍事力が行使される

  • 軍事力の資金調達として、通貨の発行が行われる

これらを考えると、法定通貨は戦争を生み出すこととセットで生まれてきたものであり、資金調達のために通貨が発行されるたび、通貨単位ごとの価値は希釈していくことも歴史的な必然なのです。

筆者の見解が極端に偏っているかもしれませんし(たぶん偏っています)、その正確さが保証されるものではありません(まったく保証はありません)。

ここで強調したい点は、単純な投資手法であっても、それを現実の中で続けるためにはしっかりとした哲学が必要だという事実です。

「ドルコスト平均法」の背後にある哲学とは、「人類は通貨発行益の魅力に抗えず、法定通貨の価値は絶えず希釈される運命にある」と深く理解し、受け入れているということです。

以上、参考になりましたら幸いです。

補足:ビットコインのドルコスト平均法を簡単にするツール

参考までに、ビットコインの積み立てを簡易に行ってくれるシステムを紹介しておきます。

ビットコイン研究所の運営会社であるAndGo社さんが提供するのは、取引所にAPIで接続して自動で買い付け発注を出してくれるものです。

自分で設定した時間に成行注文をぶつけに行くシンプルなシステムです。

時折取引所が積立を提供していることもありますが、その内訳は異常に広いBidAskスプレッドを取られる「販売所」である場合もあります。

AndGo社さんのシステムは「取引所」で実行されるので、高いスプレッドを取られることはありません。

もちろん注文金額の決定には板の確認も必要ですが、ドルコスト平均法には良いツールかもしれません。

なお、残念なことに約定代金のキックバックが私のポケットに入ることはありません。

以上は、残念なミニ知識でした。

まとめ

今回の記事では、ドルコスト平均法を例に挙げ、良い結果を残すためには人間の本質を理解する哲学が必要であることを説明しました。さらに、その哲学を形成するためには歴史を振り返ることが効果的であることも示しました。

それでは、また来週お会いしましょう!

ココスタ

佐々木徹